カーモードベアー Kermode Bear

主な生息地ブリティッシュ・コロンビア州
体長・体重200cm〜280cm、40kg〜270kg
毛の色黒、ブロンド、褐色、シナモン色
好物草の根
特徴胸にあるしっかりとした斑点

ブリティッシュ・コロンビア州北西部の森には不思議な白いクマが生息する。古くからこの地に住む先住民ツィムシアン族の間でこんな言い伝えが語り継がれている。『世界が氷と雪に閉ざされていた氷河時代、この世の創造主ワタリガラスが天から舞い降り世界を今日のように緑豊かな土地に変えた。
しかし、すべてが真っ白だった氷と雪に閉ざされた時代を忘れさせないために、ワタリガラスはブラックベアーのもとへ行き、10頭に1頭を雪の色に変え、永遠に平和に暮らすように命令した。』というものだ。白人としては、ニューヨーク動物学協会のナチュラリストW・T・ホーナデイが、数年の調査の後、 1905年に初めてこの白い不思議なクマを発見した。当時彼のために献身的にサポートしたロイヤル・ブリティッシュ・コロンビアミュージアムのフランシス・カーモードにちなんで「カーモードベアー」と名付けられた。先住民の間ではスピリットベアーやゴーストベアーと言う名ですでに呼ばれていたときのことである。カーモードベアーの生態については不明な点が多い。種類で言うとブラックベアーの亜種ということになる。
どのような経緯で白いブラックベアーが誕生するか等詳しいことは分かっていないが、一番有力な説としては何らかの関係で劣性遺伝子を持つブラックベアー同士が交配するとその子供は白いブラックベアーになるというものである。

カーモードベアー 生息マップ

生息地区域は、バンクーバーから北へ500km以上離れたスチュワート、ヘイゼルトン、ベラベラの三角地帯である。 26,000km 程あるこのエリアには、400頭あまりのカーモードベアーが生息していると、科学者たちは推測している。その中でも先に紹介した先住民の伝説が残るプリンセスロイヤル島、グリブル島では秋に遡上するサーモンをクマが捕食するシーンが数多く見られるという。ただ、なぜこのブリティッシュ・コロンビア州北西部のこのエリアのみに存在するかは諸説あるが未だ謎である。 カーモードベアーが生息する地域は、カナダの中でも人々から忘れ去られたような無数の小さな島が点在し、海岸線は入り組み、本土内でも道路が無く用意に近づけない地域だ。だからこそ、それらの森にはカーモードベアーの他にグリズリーベアー、ブラックベアー、オオカミ、シカ、白頭ワシなどが生息し、5種類のサーモンが60を超える河川を遡上するなど微妙なバランスに保たれた太古の自然が現在も残っている。カーモードベアーは10頭に1頭という割合で生まれてくるということは、少なくともその10倍のブラックベアーが 生息していることになる。つまり、生態系のほんの小さな変化がこの貴重で希な白いクマの生息を脅かすことになるのだ。現実的にこの生態系をずっと維持することは消費社会の現在においてかなり難しい。カーモードに限らず森林によって森の動物、植物、川の魚、人間などの生物は生かされている。だが、先住民などの話によるとブリティッシュ・コロンビア州各地では木の皆伐(クリアカット)が盛んに行われ自然破壊はますます進んでいる。その木材の多くは日本の企業が買い付け日本に輸出されているという。
私たちが知らないうちに約7,500km以上離れたカナダの生態系を揺るがしている可能性もあるのだ。カーモードの未来は私たちが握っていると言っても過言ではない。



「白と黒」のクロクマの共演

川原に現れたカーモードベアー

カーモードベアーに出逢う場所

-グレートベアーレインフォレスト-


サケを狙うカーモードベアー

ベアーウオッチングサイトからの観察

ブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバー島北端に近いカナダ本土の海岸から南東アラスカはグレートベアーレインフォレストと呼ばれている。
それは、北アメリカ、チリ、北欧、及びニュージーランドでかつて豊富であった温帯雨林の最後の原生林である。9月になるとサーモンが2,500箇所以上の川を遡上し、それを目当てにカーモードベアー、ブラックベアー、グリズリーベアーが海岸部にやってくるのだ。
シーズンには宿泊が可能なボートを利用してのベアーウォッチングツアーが盛んに行なわれている。
また、グレートベアーレインフォレストの中に位置し、カーモードベアーがブラックベアー10頭に1頭という高い割合で生息するプリンセスロイヤル島にはキングパシフィックロッジというカナダを代表するウィルダネスリゾートが夏期のみ営業する。このロッジのアクティビティーには専門家とともにカーモードベアーを探す野生動物観察ツアーが用意されている。
※シーズン : 9月